建部巣兆筆「うち水の」自画賛幅
冨田鋼一郎
有秋小春BK
しののめやあじろあじろの親父ども 巣兆 印「松甫」
季語:網代(冬)
冬の明け方、網代漁にでかける男衆の浮き立つ気持ちが、「あじろあじろ」と繰り返す言葉で伺うことができる。縁先から網代を眺める親父の姿はどこかユーモラスだ。しののめと網代の愉快なことば遊び。
「しののめ」の「め」は、原始的住居の明かり取りの役目を果たしていた網代様(あじろよう)の粗い網目のことで、篠竹を材料として作られた「め」が「篠の目」と呼ばれた。これが明かり取りそのものの意になり、転じて夜明けの薄明かり、さらに夜明けそのものの意になった。
建部巣兆(たけべそうちょう1761-1814)
江戸後期の俳人。